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https://thetv.jp/news/detail/1073483/
俳優・比嘉愛未が主演を務める映画「吟ずる者たち」が広島先行後、3月25日(金)より東京はじめ全国順次公開される。比嘉へのインタビューで、同作で描かれた古き良き時代の人々の温かさに対して感じたことを聞くとともに、流れに身を任せつつも常に挑んでいたいという、穏やかでありながらストイックな彼女の俳優論に触れた。
酒造りを軸に、モノ創りに励む全ての人に感動を届ける同作。比嘉は、東京で夢破れ故郷の広島での酒造りに引かれていく永峰明日香を演じる。令和の主人公・明日香と明治の主人公・三浦仙三郎(中村俊介)が、時代を越えて酒造りへの熱い思いを紡ぐ感動作となっている。
毎日が贅沢な時間で、かみ締めながら撮影
――全編広島ロケで撮影されたとのことですが、酒蔵に行った印象を聞かせてください。
良い意味で時が止まっていると言いますか、「本当に現代なのかな」というぐらい酒蔵の良さがそのまま残っているんですよね。タイムスリップしたかのような感覚になれて、すごく居心地が良かったです。本当に圧倒されました。
――現場の雰囲気はいかがでしたか?
今回は油谷誠至監督のチームということで、私も以前にご一緒した「飛べ!ダコタ」(2013年)という作品とほぼ同じスタッフの方たちだったんです。久しぶりにお会いできたのもうれしかったですし、本当に心地良く撮影できました。
皆さん、私が生まれる前から日本の映画を作っているような巨匠の方々ばかりでしたので、またこうしてご一緒できて、主演という立場で立たせていただけることは、本当に毎日が贅沢な時間でしたし、かみ締めながら撮影をしていました。
「自分はどう進化したらいいんだろう」と考えること
――演じた明日香とご自身の共通点、相違点があれば教えてください。
人生をちょっとだけ立ち止まって「このままでいいのかな」と考えてしまうところは、私自身もなくはないな、と思いました。今はありがたいことに夢を追いかけてきて、自分が好きなこのお仕事をさせていただけていてとても感謝しているんですが、「この先どうなっていくのかな」とか「自分はどう進化したらいいんだろう」と考えることもあるんです。
例えば、地元に帰ったら同世代の友達たちはもう結婚して、子供も大きいんですよね。そういうものを目の当たりにすると、ふと「あれ、私ってこのままでいいのかな」と思ってしまったりするんです。
明日香もきっと、立ち止まって挫折して、地元に帰った時に、一回ゼロに戻ったんですよね。そういうところはすごく共感できました。ネガティブな意味ばかりではなくて、一回立ち止まってゆっくり俯瞰で見て、自分は何がしたくて、本当は何が好きで、何が嫌いなのか。自分で確認しないでただただ流されているままだと、見失いがちになってしまうと思うんです。
――明日香にとっての酒作りのように、比嘉さんが現在の俳優業を天職だと感じるのはどんな時ですか?
「天職」と自分では思えないんですが、お仕事は好きです。作ったものは届けられないと意味がないので、それは客観的に見ていただくことだと思っています。無事に作品が届けられて、お客さまから反応があって「届けられた」と感じられる時に「やっていて良かったな」と思います。
芝居も“百試千改”「チャレンジし続けて、それに対して折れない心が必要」
――比嘉さんご自身も、お酒はよく飲まれるのでしょうか?
大好きです。一番幸せだなと思うのは、大好きな人たちとおいしいご飯を食べながら、そのご飯に合うお酒を飲むことですね。
――一人でも飲まれますか?
一人でも飲みます。「今日は仕事をすごく頑張った!」とか、自分を褒めてあげたい日ってあるじゃないですか。そういう時にはおいしいお酒を「ご褒美だな」と思いながら、ありがたくいただいています。
――酒造りに関して「百試千改」、つまり百回試して千回改める、という言葉が出てきましたが、これはお芝居とも共通するように思えます。
そうですね、本当にすてきな言葉だなと思います。お芝居も正解がないと思っているので、とにかくチャレンジし続けて、それに対して折れない心が必要だなと思います。
この作品の時代の人々には、今の時代に見習うべき点がいっぱいあると思うんです。便利になりすぎている影響か、最近の人はメンタルが弱くなっていると思うんです。ストレスという言葉は皆さん口ぐせのように出るけど、昔はストレスなんて言葉はなかったんじゃないかなって。
みんなが究極に大変な状況の中、耐えて耐えて、どんどん切り開いていくのが当たり前だったのに、便利になったからこそ弱くなってしまった、という考え方もあると思うんです。
コロナ禍でみんなが落ち込んでしまっているかもしれないような時代ですが、だからこそ百試千改の言葉や精神から「日本人ってもっと強いはずだよね」と学ぶこともできると思います。
ストレスの解決は「信頼できる友達と家族に聞いてもらうこと」
――比嘉さんご自身は、ストレスとどのように向き合っていますか?
一番早い解決方法は、信頼できる友達と家族に聞いてもらうことだと思います。相談までいかなくても、聞いてもらってちょっと吐き出すだけで、軽くなると思うんです。
でも、一番理想的なのは自然の中に行って、ただただボーッと無になること。とりあえず自分が抱えているモヤモヤを切り離せる場所に自分を持っていくことですね。海や山に行って、ただ深呼吸するだけでもだいぶ違うと思います。
――自然が少なくなっていることも、現代人のストレス耐性に影響しているかもしれないですね。
あると思います。いろいろなものが便利になったことに対するアンチ、というわけではないんですが、自然とストレスに対する抗体を持たなくなってしまっているんじゃないかなと思うんです。
大小はともかく、ストレスを抱えてない人はたぶんいないと思うんですが、この作品の時代は、それをあまり感じさせないぐらい、生きるのに精いっぱいだったと思うんです。
何が正解かは分からないですが、不自由だからこそ、それぞれ人間力があったり、家族同士がすごく心を支え合っていて、絆も深かったりする。隣人との関わりもそうです。私も東京に出てきて15年たつんですが、他人との関わりが薄くなっていることも、心の免疫力が下がる原因の一つではないのかなと思います。
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