2022年11月28日月曜日

2022/11/28 『作りたい女と食べたい女』ドラマ制作統括が語る意図「女性同士の恋愛が、自然な形でメインで描かれることに意味がある」 | WEBザテレビジョン



『作りたい女と食べたい女』ドラマ制作統括が語る意図「女性同士の恋愛が、自然な形でメインで描かれることに意味がある」 | WEBザテレビジョン

https://thetv.jp/news/detail/1112432/


『作りたい女と食べたい女』ドラマ制作統括が語る意図「女性同士の恋愛が、自然な形でメインで描かれることに意味がある」
ドラマ インタビュー 編集部おすすめ

2022/11/28 08:30
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夜ドラ「作りたい女と食べたい女」が11/29(火)より放送開始(C)NHK

夜ドラ「作りたい女と食べたい女」(毎週月~木曜夜10:45-11:00、NHK総合)が11月29日(火)から放送される。原作はゆざきさかおみによる同名漫画。料理を作るのが好きだが小食の野本さんと、食べることが好きでたくさん食べる春日さん、ふたりの女性が出会い、共に食卓を囲んで交友を深める中で生まれる恋と連帯を描く本作は、SNSで多くの共感の声を集め、ドラマ化の第一報にも活発な反響がみられた。今回のドラマ化にあたり、制作統括をつとめるNHKの坂部康二さんにインタビューを行い、ドラマ化の企画経緯や狙いを聞いた。原作を読み「今の時代の空気が共有された作品」だと感じ、ドラマ化を提案したという坂部さんは、本作について「女性同士の恋愛が、自然な形でメインで描かれることに意味がある」と語る。


「つくたべ」は「今の時代の空気が共有された作品と登場人物」


ドラマ化のきっかけは、坂部さんが偶然SNSで原作漫画の「作りたい女と食べたい女」(以下「つくたべ」)を読んだことだった。

「ちょうど『アナと雪の女王』以降、シスターフッド(女性同士の連帯や結びつき)をテーマにした作品が増えてきていて、今まであまりドラマで描かれてこなかった人や人間関係を描いてみたいと思っていたんです。『つくたべ』では女性同士の連帯や結びつきに加えて、女性同士の恋愛を描いていて、さらに男女間の賃金格差など、『なんで今までちゃんと描かれていなかったんだろう、描かれるべき』と感じるような部分も表現されている。今の時代の空気が共有された作品と登場人物である点に魅力を感じました」
女性同士の絆を描き、SNSでも支持が厚い原作「作りたい女と食べたい女」2話より (C)NHK


そもそも、なぜこれまでシスターフッドをテーマにした作品が少なかったのか。その理由を坂部さんはこう推測する。

「家父長制に基づく男性中心社会が反映されている部分はあるのではないでしょうか。ドラマで男性同士の競い合いや共闘関係などはフォーカスされても、女性同士の絆にメインのフォーカスが当たることはあまりなかった。でも、そうでないところにも物語はあるし、多様性が語られる中で、そういったドラマが作られる機会が増えてきたということかもしれません」

ドラマ化にあたり、坂部さんは「意味」と「責任」の両方を感じているという。

「全国ネットで、見たい人が誰でも見られるので、漫画を読まない方をはじめ、新しい層の視聴者に届けられる。そこに意味があるし、同時にある種の責任も感じています。また生身の人が演じることで、登場人物の心の動きや葛藤がよりリアルに伝わる。原作でもすごく丁寧に描かれていますが、改めてドラマ化にあたり、この感情とこの感情の間をどうつなげるか、を細かく話し合って脚本を作っています」


オーディションで選ばれた春日さん役の決め手は?

大柄でたくさん食べる春日さん(西野恵未)「作りたい女と食べたい女」1話より (C)NHK


今回、物語の主人公である野本さんは比嘉愛未、そして野本さんが出会い恋する春日さんはオーディションで選ばれた西野恵未が演じる。元々俳優として活動してきたわけではなくミュージシャンである西野は、オーディションによって選ばれたキャストだ。2人のキャスティングについて聞いた。

「前提として、原作で描かれている春日さんの人物像になるべく外見を近づけたいと思ったとき、俳優として既に活動されている女性の中で、なかなか体格的にあてはまる方が見つからなかったんです。これはルッキズムとも関連すると思いますが、背が高くて細い、いわゆるモデル体型の方はいても、原作の春日さんのようにがっしりした体格の方はいなかった。でも、この作品は『じゃあ細くしていいよね』というものではない。そこでオーディションを実施しました。もちろんドラマ化する上では、俳優として知名度のある人をキャスティングした方がいいという考え方もある中で、オーディションというやり方をとれたのはすごくありがたいです。選考では外見の体格や印象、演技経験が浅い方の場合はトレーニングを受けていただく時間があること、食べるのが好きという点を重視しました。春日さんというキャラクターが持つ魅力を、ちゃんと表現できる方という軸で考えました。

【画像】再現度に注目、原作の野本さんと春日さん

野本さんは原作の年齢設定が30代なので、そのリアリティが伝わるよう実年齢が近い方に演じていただきたかった。比嘉さんは演技の実力、俳優としての知名度、ご本人がLGBTQ+に関心があり理解しようとしていること、料理がお好きなこと、いわば全ての必要項目を満たしていて、ぜひお願いしたいと思いました」
料理が好きだが小食な野本さん(比嘉愛未)「作りたい女と食べたい女」1話より (C)NHK


近年では、機会の平等の視点から、マイノリティのキャラクターは当事者であるマイノリティが演じるべきではないかという考え方も生まれつつある。坂部さんもそれを検討したが、今回は難しかったという。

「レズビアンをオープンにしているプロの俳優さんは、現状だとそんなに数がいらっしゃらない。もちろんそれ(セクシュアリティ)は必ずしもオープンにしなければいけないものではありませんが。今後誰もが(セクシュアリティを)オープンに発信しやすい時代や社会になったときには、レズビアンの役はレズビアン当事者の方に演じてもらうという選択肢が最初に来るべきと思います。ただ現状はまだそうでない、過渡期の中での選択です。また、セクシュアリティは一定ではなく変化することもあり、『つくたべ』においては野本さんも自身がレズビアンだと気づいていく途上過程なので、この役は当事者が演じなくてはいけないわけではない、という判断をしました」


https://thetv.jp/news/detail/1112432/p2/


誰かとごはんを食べると、相手をより知ることができる

2人が一緒にごはんを食べるシーンに注目「作りたい女と食べたい女」3話より (C)NHK


ドラマの脚本は、劇団「贅沢貧乏」主宰で、ドラマ「17.3 about a sex」「30までにとうるさくて」(共にAbema)などを手掛けた山田由梨が務める。

「過去の作品を拝見して、山田さんにお願いしたいと思いました。他局ですが『17.3』は、10代の女性のジェンダー・セクシュアリティについて、丁寧に取材した上でエンタメに昇華している作品でした。山田さんご自身も元々『つくたべ』読者で、原作が大事にしていることをそのまま大事にしてドラマにしなければいけない、大事にしないなら私が守る、という意気込みで臨んでくれています。原作者のゆざきさんとは、『女性同士の恋愛であることを薄めない』、同時に『女性同士の恋愛を売りにして過剰に関心を集めない』というお話をしています」

同時に、ドラマとしてよりよいものにするため、原作から変更した点も存在するという。

「原作は漫画なので、野本さんの心の声で気持ちの変化やストーリーが描かれる場面が多いのですが、ドラマでモノローグを多用するのは見やすさの面で避けたい。そこで、野本さんの周囲にオリジナルキャラを配置し、モノローグを彼らとの会話や行動に変えている部分があります。また“女性の賃金が低く抑えられている”ということを表現するときに、原作だと野本さんの給与は具体的な金額が出ていますが、賃金格差が様々な形で進行している現代では、いくらなら“低い”のかという基準も見定めにくいので議論しました。その他、ドラマにする上で色々といい塩梅を探ったところはあります」

ドラマでは、実写化された「デカ盛り」料理シーンも見どころのひとつだ。

「劇中で大盛りの料理がたくさん出てくるので、それがおいしそうに見えるよう、料理家のぐっち夫婦さんに監修してもらっています。楽しみにしてもらいたいところのひとつですね。この数年コロナ禍で、人とごはんに行こうという機会が減りましたが、誰かとごはんを食べると相手をより知ることができて関係性が深まるし、よりおいしく感じるということを、改めて提示できる物語になっていると思います」
野本さんが初めて春日さんに振舞った手料理「作りたい女と食べたい女」1話より (C)NHK




『作りたい女と食べたい女』ドラマ制作統括が語る意図「女性同士の恋愛が、自然な形でメインで描かれることに意味がある」(3/3) | WEBザテレビジョン
https://thetv.jp/news/detail/1112432/p3/



『作りたい女と食べたい女』ドラマ制作統括が語る意図「女性同士の恋愛が、自然な形でメインで描かれることに意味がある」
女性同士の恋愛が、自然な形でメインで描かれることに意味がある女性同士の恋愛を描くドラマはまだ少ない 「作りたい女と食べたい女」4話より (C)NHK

近年、男性同士の恋愛を描くドラマは増えてきており「BLドラマ」としてジャンルを確立しつつあるが、女性同士の恋愛作品はまだ数少ない。この作品を作る上で特に留意している点について尋ねた。

「女性同士の恋愛を描く作品はまだ少ないので、今後の作品に与える影響も意識しています。今回スタッフ内で話し合い、この作品においては“ジャンルとして消費される”のを避けるために『GL』という打ち出し方はしませんでしたが、女性同士の恋愛ということを薄めたい意図ではありません。ジェンダー・セクシュアリティ考証として、セクシュアリティやジェンダーについて漫画で発信するメディア『パレットーク』編集長の合田文さんと、ジェンダー・セクシュアリティ研究者でご自身もレズビアン当事者を公表している中村香住さんに監修を担当いただき、メディアとして発信する視点・アカデミックな視点の両方から、丁寧に台詞や表現について検討していただいています。当事者の方が、番組が発するメッセージから偏見や搾取を感じる要因をなくしたいと思っています。

同時に、今なお同性愛に対して抵抗感がある方がいるのも事実です。だから、ドラマにする上で難しかった点のひとつが、野本さんがレズビアンを自覚し受け入れる場面の描き方でした。彼女が気づいた自分の感情とどう向き合うか。スッと受け入れるのか。もし葛藤があるとしたら、それは何に由来しているのか。社会から押し付けられたバイアスなのか。そういった点をよく話し合いました」

確かに、遺憾なことではあるが、今の日本では完全に同性愛に対する偏見がなくなっているとは言い難い。そんな中、坂部さんがこの作品にこめる狙いは何なのか。

「『つくたべ』では、女性同士の恋愛が自然に描かれています。野本さんと春日さんも、隣にいそうな人たち。彼女たちの恋愛が、悲恋や、異性愛キャラクターのかませ犬のような形でなく、自然な形でメインで描かれることに意味があると思います。もちろん、当事者の方からしたら『やっとかよ』と思われるでしょうし、現実に社会に存在している方々に対して、ドラマをはじめとするエンターテインメントが追いついていない事実はあります。でも、その『やっと』をドラマで繰り返し広げていくことで、社会の側にも『女性同士の恋愛も当たり前にあるよね』という意識が広がったらいいなと思いますし、それが社会とつながったドラマというものの作用だと思っています」ふたりの恋愛を自然な形で描く「作りたい女と食べたい女」4話より (C)NHK

最後に、放送を楽しみにしている視聴者へのメッセージをもらった。

「もちろん結果としてどう受け止められるかは視聴者の方次第という覚悟は持ちつつ、原作を好きでいてくれる方のためにも、原作が持つ魅力やエッセンスを損なわないように忠実に描きたいと考えています。同時に原作ファンでない方にもご覧いただきたいですし、どちらかというと女性の方が共感を持つ題材だろうことは理解していますが、自分は男性なので、作品を通じて男性にも新しい何かを感じてもらえたら嬉しいです。そして視聴者であるレズビアン当事者の方を裏切りたくないと思っています」






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