2022年11月24日木曜日

「帰ると、95歳のおばあに料理を作ってもらいます」夜ドラ『つくたべ』比嘉愛未さんインタビュー|ウートピ

「帰ると、95歳のおばあに料理を作ってもらいます」夜ドラ『つくたべ』比嘉愛未さんインタビュー|ウートピ






「帰ると、95歳のおばあに料理を作ってもらいます」夜ドラ『つくたべ』比嘉愛未さんインタビュー

11月29日から放送が始まる、夜ドラ『作りたい女と食べたい女』(全10話)で主演を務める比嘉愛未さん。

夜ドラは、2022年4月から始まったNHKのドラマ枠。同局の連続テレビ小説"朝ドラ"のように、平日の夜15分間の内容が放送されます。

朝ドラ『どんど晴れ』でドラマデビューした比嘉さんが、15年の時を経て、夜ドラにカムバックすることでも話題の本作は、ひょんなことから知り合った「作りたい女」と「食べたい女」の、料理を通じた交流と女性同士の恋愛が描かれた物語。

比嘉さんに、本作(つくたべ)やご自身のことについて話を聞きました。

原作の深さに驚いた

——原作のことはご存知でしたか?

比嘉愛未さん(以下、比嘉):お話をいただいて原作を知りました。たくさん料理を作りたい野本さんと、お腹いっぱいご飯を食べたい春日さん。二人の時間が心地よく、素敵な世界観が描かれていると思いました。

けれど、読み深めていくと女性を取り巻く社会環境や偏見など、その幅の広さや深さに驚いて。「自分らしさとは?」と私自身も問いかけられているような気がしました。

——自分のために料理することが「いい彼女」や「いいお母さん」になりそうだと無邪気に言われてしまうことにモヤモヤするとか、(意図的・無自覚にかかわらず)性的役割の押し付けにうんざりするような部分に共感しました。

比嘉:そういう偏見や誤解が描かれているシーンは私も共感できました。私はいわゆる"男勝り"な一面もありますが、それを隠して"女らしく"しなきゃとは思っていなくて。自分は自分らしく生きようと思っているんです。

けれど、それを阻むように根強く残っているものが時々ありますよね。女性だと発言しづらい場面があったり、地元に帰ると「結婚はまだ?」「子供は?」と聞かれたり。悪気はないと理解していますが、「うっ……」と思ってしまうところは正直あります。

——「女性」だと一括りにされるのはしんどいですよね。だけど、そういう「女性」しか私たちは見せられてこなかったのかなと思ったりもします。

比嘉:私も違和感を持つことがあったので、「ドラマで描かれる女性像は、どんどんアップデートされています。男性主人公を支えたり、恋の相手としてだけ存在するのではなく、また女性同士がいがみあってマウンティングし合うのでもなく」という、制作統括の坂部さんのコメントをはじめ、制作スタッフの思いに共感しました。撮影中も「男」や「女」ではなく「個」を大切にしてくれていると感じましたね。

ピュアは強い

——今回演じた、野本さんという人物についてはどんなことを思いましたか。

比嘉:彼女は「違和感」や「同調圧力」にまっすぐ疑問を持てる人。すごくピュアな人だと思いました。例えば原作で、大人になるにつれ友人たちの話題が「恋愛」になっていくシーンがあります。野本さんの「いっちゃうの?」という問いかけに対して、彼女たちは「だって、『みんな』そうしてるし」と答える。

自分もそうするべきか野本さんも葛藤しますが、それは彼女自身が「普通って何?」という違和感をちゃんと持っているから。それって、今の社会では簡単なことではないと思うんです。

私たちは小さな頃から「みんな」と「同じ」であることがいいと刷り込まれがちというか……。どこかに枠組みから外れちゃいけないって意識がありますよね。私自身も「こうしなきゃいけない」「こうあるべき」と、無意識に"空気"を読もうとしてしまうことがまだあります。

けれど、野本さんはそんなときに「どうして?」と立ち止まることができる。みんなと同じであるより、自分はどうしたいのかと模索を続ける彼女は人間味があって魅力的だと感じました。

本作で俳優デビュー!西野恵未さんってどんな人?

——春日さんを演じた、西野恵未さんは演技未経験だそうですね。共演してみていかがでしたか?

比嘉:彼女は、本当に素晴らしい人ですよ。放送が始まったら、「この役者は誰だ!?」って衝撃が走ると思います。

——西野さんから刺激を受けた部分はありますか。

比嘉:自分は演技未経験で、相手は十何年も演技をしている人という状況ってすごく緊張すると思うのですが……西野さんは「楽しい〜!」って目をキラキラさせて言うんです。終始ワクワクキラキラで。彼女もすごくピュアな人ですね。一緒にいて、初心を思い出させてもらいました。

それから、彼女と話しているとリズムを感じるというか……。普段ピアニストとして活躍されているのも関係しているのか、会話するときの、受け取って話してのやりとりが、まるで音楽のようなんです。不思議な感覚でした。穏やかさとか佇まい、一緒にいて心地よく感じさせるペースを学ばせてもらいました。

——いい雰囲気なのが画面から伝わってきました。春日さんとしての食べっぷりもよかったです。

比嘉:どんどん食べてくれる姿って嘘がなくていいですよね。食べる姿には実は見どころがもうひとつあって……実は西野さん、口が小さいんです。なので、漫画で描かれる春日さんのようにガツガツ、バクバクという感じではなく「かぷっ!」って。小さい口で一生懸命食べる姿をぜひ見ていただきたいです。

誰かと一緒に、作ること食べること

——私も地元が沖縄なので個人的に、野本さんが大量に料理を作って振る舞う姿が、沖縄のおばぁがたくさん食べさせようとする「カメカメ攻撃」に少し重なって見えました。比嘉さんの「作ること食べること」にまつわるエピソードがあれば聞かせてください。

比嘉:私、沖縄に帰省すると95歳の父方の祖母にごはんを作ってもらうんです。以前は、食事を済ませてから祖母の家に寄って、お茶をしながらおしゃべりをしていたのですが、ふといつまでこの時間を過ごせるだろうと考えてしまって。

それで、どんなレストランで食べるよりも、おばぁの手料理を食べておきたいと思い、ご飯を作ってもらうようになりました。その時間が本当に尊くて。嬉しそうに作ってくれる姿も含めて、差し出されるもの全てが私の栄養になっている感じがします。

——いいですね。

比嘉:食事中、祖母の人生の話もいろいろ教えてくれるんです。戦時中は食べる物がなかったからソテツを食べていたんだよ、とか。

——ソテツって毒性があるから、気をつけて調理しないといけないんですよね。でもそれくらい食料が不足していたという。そういう苦しい時代が語られるときに聞いたことがあります。

比嘉:おばぁたちが「食べなさい」「食べなさい」と「カメカメ攻撃」をするのって、食べられない時代を経験しているからなんですよね。一方の私たちは、食べられるものでも捨ててしまう「食品ロス」の時代に生きている。ギャップがあるので、おばぁ世代の話を本当には理解できないかもしれませんが、そういうことがあったんだと知ることはできます。だから、生きた言葉をちゃんと聞ける機会を大事にしたいと思うんです。

——知ることって大事ですよね。

比嘉:実は、祖母の家でお茶を飲むだけの頃は、こういう深い話にはなりにくくて。そう考えると、ご飯って人の心を解く力があるのかもしれませんね。解いて、深める力が。

元気でいること、いい自分でいること

——母方のおばあさまもお元気だとか。

比嘉:はい。84歳でお店を営んでいるアイドルおばぁです(笑)。みんなが元気をもらいに祖母に会いに来るんですよ。私もいつも刺激を受けています。

——元気とか健康でいることって、自分のためでもありますが、もしかしたら周りの人たちのためでもあるのかなって思うことがあります。比嘉さんが、ご自身の健やかさを保つために心がけていることはありますか?

比嘉:会うと元気になる人、そういう自分でありたいと思っています。そのために、ちゃんとご飯を食べて、夜は眠るとか、何か特別なことをするのではなくても、規則正しい生活を続けることを意識しています。日々、自分を整えるというか。

私の仕事は基本的にたくさんの人と出会ってお別れしての繰り返しです。なので、自分自身のバランスが取れていないと、消耗してしまうんですよね。

——わかります。人と会うって「人間関係」以前にすごくエネルギーを使いますよね。

比嘉:バランスを取るためにいろんなことを試してきたのですが、ここ2、3年は朝の瞑想をルーティンにしています。

——夜じゃなくて朝ですか?

比嘉:はい。夜だと思考がぐるぐるしてしまって。私には朝が向いているみたいです。まず部屋の空気を入れ替えて深呼吸をして。好きなお香を焚いてから、10分だけでも呼吸を意識しながら内観する。そうやってその日の自分の軸を整えたら、今日も一日大丈夫だと思える。ある意味おまじないのようなものですね。

でもそうやって整えていたら、仕事との出会いも変わったような気がします。今の自分だから「つくたべ」の野本さんという役に出会えたのではないかと。

——いい自分でいることが、いい仕事を引き寄せたと。

比嘉:そうだと思います。あと、女優という仕事もプライベートも、流れるように生きていたいという願望があって。「私という人間はこう!」と決めつけて頑なにならずに、どんどんブラッシュアップしたいし、循環させていきたいんです。

たとえば、今回、野本さんから得たものをこうやって言葉にして発信して、次の人に渡すことで、私の中からは手放していく。そうすると、新しい役が入ってくる場所を作ることができますよね。循環を続けることが、面白い出会いの連鎖を生むのかなと思います。

(取材・文:安次富陽子)

■夜ドラ 『作りたい女と食べたい女』
【放送予定】2022年11月29日(火)~12月14日(水)
(NHK総合)月~木 夜10:45~11:00 <全10話>
※全エピソードをNHKプラスでも配信。
NHKプラス公式サイト (https://plus.nhk.jp/watch/ch/g1)

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