「推しは仕事」の比嘉愛未 他者の人生を輝かせるために
「推しは仕事」の比嘉愛未 他者の人生を輝かせるために
ドラマ「推しの王子様」(フジ系、木曜夜10時30分)に主演する比嘉愛未(35)だが、これといった"推し"はないという。「フラットに全部好きって感じで」。音楽にもアイドルにも、はまったことがなかった。
推しといえば仕事。「人生を終えるまで推しなんだろうと思います」。それだけのめり込む理由がある。
あるドラマで看護師役を演じた。出演後、しばらくしてファンから手紙をもらった。ドラマをきっかけに看護師を志し、実際になることができた。そんな感謝の言葉がつづられていた。「フィクションがノンフィクションになるってすごいことじゃないですか。人の人生を輝かせることができるのは幸せなことです」
同じことを、「推しの王子様」でも感じる。主人公の泉美は、女性向け恋愛ゲームを制作するベンチャー企業の社長。仲間思いで周りの人間を喜ばせたいという思いが強い。「自分の欲ではなくて、心から貢献できるかどうか。泉美はそれができる。自然と。迷いなく」。他者への思い。それは自分の幸せにつながる。泉美と自分を重ね合わせながら、改めて、そう思う。
映画にドラマにと多忙な日々が続く。気分転換は自然に身を置くこと。コロナ前は、よく実家の沖縄に戻った。素の比嘉愛未に戻るため。1人でドライブして海に行く。とっておきの秘密の場所があるのだという。「沖縄の人って誰にも教えない自分だけの大好きなビーチがあるんですよ」。いたずらっぽく笑う。
その沖縄はコロナ禍で、厳しい状況が続く。高齢の祖父母には、こまめに連絡している。だが、こちらの心配をよそに東京の様子を気遣ってくるという。「なんくるないわけないんですけど。どしっと構えている。戦争を経験していますからね。みんな強いです」。いつも前向きな姿勢に力をもらっている。
人と会いづらい時代だと感じている。でも、だからこそコロナ禍では、「みんな自分を見直せたと思うんです」。何が好きで、何にはまるのか。自分にとって「良い」とは。生きがいとは。自身も、仕事一筋だったこれまでを振り返った。
昨年、アクリル画を描き始めた。無性に何かを表現したかった。絵を描くのは子どものころ以来だった。ようやく見つかった「推し」でもある。
食事を忘れるほど没頭している。よく描くのは沖縄の海や空。やっぱり自然が多い。描いた絵は友人にあげている。完成待ちが出るほどの人気で、自分の部屋に飾る絵がない。「やっと見つけた趣味なので続けていきたいです」
2カ月ほど前。沖縄の父が写真を送ってきた。海越しの燃えるような朝日。強烈な赤だった。「がんばれよ」。そう言われている気がした。涙が出そうなほど、心が動いた。
次は、その太陽の絵を描くことにしている。今度は自分の部屋に飾るつもりだ。かけがえのない、故郷の推しだから。(田島知樹)
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