2021年5月16日日曜日

2021/05/16 比嘉愛未、30代半ばでやめられた“自分のアラ探し”。自然体で生きるコツ | bizSPA!フレッシュ

比嘉愛未、30代半ばでやめられた"自分のアラ探し"。自然体で生きるコツ | bizSPA!フレッシュ








比嘉愛未、30代半ばでやめられた"自分のアラ探し"。自然体で生きるコツ

 幅広い世代の支持を集める女優の比嘉愛未さん(34)が、2021年5月7日より全国で上映中の映画『大綱引の恋』に出演しました。本作は2020年3月に62歳で急逝した佐々部清監督の遺作となりました(新型コロナの影響で一部劇場の上映日程が変動。詳細は公式サイトを参照)。

比嘉愛未

比嘉愛未さん

 鹿児島で400年以上の歴史と伝統を守り続けている川内大綱引を題材に、主人公の家族や彼自身の愛の物語を描く、この物語。比嘉さんは、主人公・武志(三浦貴大)の妹・敦子役を演じています。

 2006年NHK連続テレビ小説『どんど晴れ』のヒロインに選ばれ、国民的な知名度を獲得したあと、連続ドラマ『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』など代表作も多い比嘉さん。しかし、完璧主義に近い性格ゆえに、人知れず葛藤する日々もあったそうです。また同じく仕事で苦悩する同世代へ投げかけたいメッセージとは? 話を聞きました。

佐々部清監督との出会い

――台本を受け取ったとき、どのような感想を抱きましたか?

比嘉愛未(以下、比嘉):まず、佐々部監督とは4~5年前にWOWOWのドラマで一度ご一緒させていただいていて、そのときから「いつか佐々部監督の映画に出たい」という想いが強くありました。そして、その出会いのあと、すぐに今回のお話をいただきました。監督直々に「出てくれないか」というお話があり、佐々部監督の作品なら絶対出るという気持ちでお返事しました。

 実際に台本を読んでみて、"佐々部イズム"と言いますか、ものすごく丁寧に人物を描かれる方なので、本当に温かい作品だなと思いました。家族の話だけでなく、いろいろな恋愛も描かれていて、主演の2人はライバル的な絆もあり、今まで日本人が忘れかけていた心みたいなものがじわっと伝わってくるような作品になっていると思いました。

――佐々部監督の作品にどうして出たかったのでしょうか?

比嘉:佐々部監督の人柄が大きいです。以前、ご一緒したときは、WOWOWのドラマで『本日は、お日柄もよく』という原田マハさん原作の全4話のドラマだったのですが、佐々部監督自身、連ドラを撮ることが初めてで、わたしも連ドラ主演が初めてでした。お互いに初めてだったので熱意が強く、一緒にいいものを作ろうという思いが重なりました。わたしも座長として頑張ろうという熱い思いが通じあった感じがしました。

女優の仕事は"出会いと別れ"が醍醐味

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『大綱引の恋』より

――現場の雰囲気はどうでしたか?

比嘉:佐々部監督は大先輩なのですが、上から目線などでは決してなく、同志として、表現者として対等に接してくださるんです。今回の作品も、いわゆる佐々部組のみなさんが出ていますが、仕事をしたらもう一度、仕事をしたいと思わせるような方々で。今回、わたしも佐々部組の一員になれたような気がして、それだけで幸せです。

――素敵な出会いがある仕事ですよね。それも仕事をする上でのモチベーションになりますか?

比嘉:まさにそうです。この仕事は普通のお仕事よりも、もしかしたら出会いと別れが多いほうかもしれないですね。長くても3か月、朝ドラなら1年。それでまた別れ、どこかの作品でまた出会う、その繰り返しなんです。

 ゼロから人間関係を築くことは体力も要るし、精神的にも緊張を強いられるんですよね。そこには相性もあるのですが、今回のように素晴らしいみなさんと出会い、一緒に仕事ができてよかったなと思えることは、まさしくこの仕事の醍醐味だなって思います。


比嘉愛未、30代半ばでやめられた"自分のアラ探し"。自然体で生きるコツ

完璧主義で、いつも自身がなかった

比嘉愛未

――その俳優という仕事について、思うことはありますか?

比嘉:1人では絶対にできない仕事なんです。人に支えられて、救われて、自分が立っていられるということは、常日頃から感じています。お芝居を始めて15年くらい経ち、30代半ばになり、ようやく自分自身の力の抜き方がわかってきたように思います。

 今までは、どこか完璧主義なところがあって、人に対してというよりも自分自身に厳しすぎてしまい、ちょっとしたミスをすると、ずっと引きずってしまったりしていました。

――自分の問題の場合、ほかの人はわからないので苦しいですよね。

比嘉:まわりがいいと言ってくれた言葉も素直に受け取らずに、「いやここが……」みたいに自分のあら探しをしてしまうことがあったんです。よく言えば向上心があるということですが、もっと成長したい、上を目指したいという想いが強すぎて、空まわりをしていたような感覚だったんですよね。だから自信はいつもなくて、でもそういう顔をしていることもスタッフさんたちに申し訳なくて、反省ばかりの毎日でした。

 でも、いろいろな経験を経て、失敗しない人間はいないという当たり前のことに気づくんです。むしろ未完成だからこそ人間は面白い。登山で山頂ばかりを目指しているとしんどいけれど、登っていく過程で立ち止まってみたり、時に引き返してもいいと思うようになりました。楽しむ心のゆとりがあるだけで、ものごとの見え方が変わって、仕事が好きになるようになった。登山は大変だけれど、道中は楽しい、それに近い感覚に最近なりましたかね。

人の顔色をうかがうのはやめよう

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『大綱引の恋』より

――15年かけてようやく辿り着いたのですね。

比嘉:そうですね。今いるステージに無理なくストンと。比嘉愛未としての自分自身が無理せず、自然体でいられるようになってきたんですよね。これは面白いなと自分で思います。今回の作品を機会に、そういう心境になれたのかもしれません。でも、それは長い人生のワンステージでの話かもしれないですし、今後もいろいろなステージが出てくると思います。

――それは非常に大きな体験ですよね。

比嘉:佐々部監督を中心に2週間ほどみなさんと過ごして、ロケ地の薩摩川内では、コロナ禍になる前だったのでよく飲みに行きましたし、本当にいろいろなことを語り合いました。「完璧でなくていい」「1日1日を一生懸命楽しもう」「ラクをするのではなく、心を

込めていれば誰も責めない」「誰かの顔色をうかがってやるのではダメだ」などなど、それは佐々部監督から教わったことでもありますね。

――いろいろな体験は、自分の視野を広げますよね。

比嘉:俯瞰で物事を見ることが大事とよく言いますが、人間ってどうしても感情的になってしまうと、狭い世界に閉じこもってしまうところがあると思うんです。たとえばモメている2人がいたとして、「なんでわからないんだ!」とけんかすることは、自分の意思を押し付けるからですよね。でも1回引いて、なぜこの人は怒っているのかと考えてみるだけで視点が変わる。その衝突が和らぐこともあると思うんです。結局は、自分次第ですよね。




比嘉愛未、30代半ばでやめられた“自分のアラ探し”。自然体で生きるコツ

心にウソをつかなければ、いい出会いが訪れる

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――比嘉さんの中でも、大きなことに気づいた撮影だったんですね。

比嘉:そうですね。完璧主義で、自分、自分だったのに、徐々にわたしが好きなことは、共同作業の工程そのものだったってことに気づけたんですよね。佐々部監督が気づかせてくれた。そういう大先輩たちの姿を見て、答えがひとつ見つかった。なのでラクになれたところもあると思います。

――職業は違いますが、同じように苦労している人たちもたくさんいると思います。最後にメッセージをいただけますか?

比嘉:わたしも20代はすごく大変でした。でもたくさん経験することは、無駄にはならないです。失敗も成功もたくさん経験して、いろいろな感情を自分で感じ取りながら、世間の意見ではなく、小さな自分に聞く感覚で、目の前の仕事に取り組んで入れば、きっと自分らしく成熟した大人になります。

 悩み事は、基本的には対人関係にあると思うんです。会社のことも人が原因で、自分だけなら悩みも少ないですよね。人との関係性も大事なんですけど、他人ばっかりになってしまっても、自分がなくなってしまうので、ちゃんと自分を見つめてあげてください。

 自分を失わないように「いまわたしは何がしたいのか」を自分の心にいつも聞いて、ウソをつかないように日々取り組んでいけば、気づいたときにはいい出会いがあり、いい経験ができるのでないかなと自分の経験上、そう思います。

<取材・文/トキタタカシ>

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